だしを名水地鶏にしています

これまでスープなどのだしに使う鶏をいろいろと変えてきました。最初は鶏ガラとぼんじりの骨と手羽先の先、次に県内産の丸鶏、そして富士宮の平飼い丸鶏。しかし最近、地元の名水地鶏の鶏ガラを使っています。この日届けられた地元のフリーパーパー「なないろ」にも載せてもらいました。名水地鶏を使ったお店の特集記事です。

もともと丸鶏を使っていたのは、鶏ガラだけだと十分な味が出ないから。なので鶏ガラにぼんじりの骨と手羽先の先を加えていたわけです。その後丸鶏にしたのは肉からの味があった方が良かったから。フランス料理のフォンドヴォライユの発想です。

それをなぜ今回また鶏ガラにしたのかは、一つはなるべく地元の食材を使いたかったから、もう一つはこれなら鶏ガラだけでも十分味が出るからです。名水地鶏とは地元の養鶏農場と精肉店が共同開発した銘柄鶏です。地鶏と名前は付いていますが、JAS法に定める地鶏ではありません。なので一般的なブロイラーより少しこだわって育てているが、JAS法の定義を満たしていないものは銘柄鶏と呼ばれます。

しかしJAS法の地鶏の定義の一つに、1平米に10羽以下の飼育というものがありますが、鶏を育てている身としてはそれでも狭すぎるだろうと思ってしまいます。うちは鶏舎だけでも約1坪、3.3平米ありますし、テラス下の運動場は約20平米もあります。そこに10羽ですからね。でもだしにはしませんよ。
2017年12月21日

タマネギ3時間炒めています

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クリームスープにはタマネギのバター炒めが欠かせません。しかしこれがたいそうな手間なのです。例えば一回に2kgのタマネギを炒めると、最初はこうして鍋一杯になります。

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これを弱火で3時間ほどじっくり炒めると、かさはこのようになります。重さにすると半分以下です。炒める時間が経つにつれかき混ぜる頻度が多くなり、初めの方は水分が多く出て放っておいてもいいのですが、最後の30分は1分に1回ほどかき混ぜないと焦げ付いてしまいます。

カレーではないので、よくある飴色になるまでは炒めません。クリームスープの色にも影響しますしね。いずれにしても根気の要る作業です。しかし手の抜けない作業です。
2014年10月1日

スゥエ、デグラッセ、ミジョテ

営業前の金曜日は毎週スープをはじめとした煮込み料理の仕込みをしているのですが、そこでは一応フランス料理の技法をいくつか使っています。それがスゥエ、デグラッセ、ミジョテです。

スゥエとは野菜を炒めるときに少量の塩を振りかけ、素材から水分を引き出すことです。汗をかかせるという意味で、英語のsweatですね(ポカリスエットのスエットです)。

デグラッセとはそうして炒めた後に鍋に焦げ目が付くわけですが、それを丸鶏だしを入れて加熱して浮かせ、素材のうま味とともにスープに入れることです。これで余すことなく取り込めます。

ミジョテとは何のことはない、とろ火のことです。ただフランス語で言っただけのことですが、煮込み料理ではこの弱火で長時間が要であり、素材の下ごしらえを含めてだから極めて手間のかかる料理です。

こうした手間を代行することが私たちの店の存在意義であり、そのできあがりをすぐに召し上がっていただきたいと思っています。
2013年8月23日

作っていて一番おいしそう

時々「お勧めのメニューは何ですか?」とお客さんから聞かれることがあります。正直どれもお勧めなのでメニューに載せているわけですが、思えば同じ質問をかつてレストランでして同じような答が返ってきたこともありました。

ただ、それぞれを作っている過程で「これはうまそうだな」といつも思うのはミネストローネです。使っている食材の数も一番多く、手間も一番かかります。でもそれぞれの味が渾然一体となったスープは、作っている本人がその最中ににやけてくるくらいです。例えば同じ甘みでもトマトの甘み、タマネギの甘み、スナップエンドウの甘みなど、複雑なものなのです。

逆に、素材の数も手間もそんなにかからないのに同じくおいしいと思えるメニューは、ひとえに素材のおかげかもしれません。味付けは塩だけとか、塩と砂糖だけというメニューがありますが、自分たちで食べてもそれだけで何でこんなにおいしくなるのだろうといつも感じています(ちなみにミネストローネも味付けとしては塩と胡椒だけです)。

いずれにしても自分たちを納得させる理由としては、手間暇かけた無農薬の野菜を穫りたてで使っているからというほかありません。
2012年11月23日

レシピはあってないようなもの

各メニューには一応基本となるレシピはあります。元は本などを見て作りながら、自分たちなりにアレンジしたものです。ただ、毎回その通り作るというわけでもありません。

その理由は、同じ野菜でも品種によって味が違う、同じ品種でも穫れる時期によって味が違うからです。毎回レシピ通りに作ってもでき上がる味が微妙に違ったりするので、その都度微調整が欠かせないわけです。プロの料理人であれば当たり前に行っていることですが、なかなか一般にはわかりづらいことかもしれません。

レシピさえあれば同じものが作れるというのは大間違い、レシピはあくまでも目安です。
2012年9月27日

だしを丸鶏にしました

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スープの味の下支えとなるだしについては、今までは鶏ガラをベースに手羽先の先やぼんじりの骨といった、コラーゲンたっぷりの素材でとっていました。それをこの度よりいっそう味と香りを追求するため、少し前から丸鶏でとっています。骨と肉の両方からうま味が出て、上品なだしに仕上がっています。

フランス料理でいうところのフォン・ド・ヴォライユであり、フランス料理店でも丸鶏ではなく鶏ガラを使っているところがあります。鶏ガラが悪いわけではありませんが、うま味はやはり丸鶏の方があると思います。

だしだけでなく、各スープの味については日々改良を行っています。お客さんに気付かれないくらいの進歩がちょうどいいのではないかと思っています。
2012年8月23日

1杯に1個や1本が入ってる

スープの容量は約200ccで、見た目には“あれっこんなもん?”と思われるかもしれません。ところがそこには多くの野菜が凝縮されていて、意外と食べ応えがあると思います。

大きさにもよりますが、例えばガスパチョ1杯には大玉トマトが丸々1個入っています。コーンクリームスープは1杯にトウモロコシが1本入っています。ヴィシソワーズもサツマイモスープもカボチャスープもしかり、1杯の中にかなりの固形分が入っています。

併せて、一般的なレシピだと入る水をまったく使っていません。ガスパチョは野菜だけの水分、クリームスープは素材を煮る際に丸鶏でとっただしを使っています。コーンクリームの場合は芯を煮出した甘い蜜のような汁を戻しています。

これだけ素材を贅沢に使えるのは、もちろんそれらの野菜を自分たちで育てているからです。すべて買った野菜で同じことをすると、結構なコストになると思います。
2012年8月21日

カブの切り方にも一工夫

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タイカレースープに入れる具として、カブが登場します。この切り方がポイントで、葉の付け根を少し残して縦に4等分すると見た目にもきれいで、食感も実と葉の2種類が楽しめます。

葉をバッサリ落とせば作業は簡単なのですが、付け根を残すとなると洗うのが結構大変です。付け根に土を噛んでいることが多く、これを流水で丁寧に取り除いていくのです。

細かいことですが、こうしたちょっとした一手間が大事だと思っています。
2012年5月11日

オレンジ色の白菜

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白菜のクリームスープ、週末に向けて仕込み中です。これは途中経過、まだ生ハムや生クリームなどが入っていないですが、色はこの時が一番きれいです。オレンジクインという中の葉がオレンジ色の白菜です。外の葉は普通の白菜と同じ、緑色をしています。

スープはどれもそうですが、このクリームスープもたいそう手間がかかります。この日はこれくらいにして、明日早朝から作業をして仕上げます。煮込み料理屋は営業日よりその前の方が忙しいのです。
2012年3月29日

スープに生ハム?

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白菜のクリームスープには自家製生ハムが入っています。生ハムを加熱するとはどういうことだと思われるかもしれませんが、この生ハムはだしとして使っているのです。厳冬期に仕込み、室内でずっと熟成させていたのですが、乾燥が進んでこのようにコチコチになっています。

もちろんこのままでも食べられますが、これを水でふやかすと良いだしとなるのです。肉の繊維質はそのまま残っているので、生ハムといえども食感は結構硬いままです。さながらビーフならぬポークジャーキーといったところです。

白菜はもうそろそろ終わりで、その後は今畑で育てているキャベツが収穫できたら、同じようなクリームスープとなります。
2012年3月29日

牛スジのサトイモは海老芋です

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牛スジのトマト煮込みにはサトイモが入っていますが、食べると意外と硬いな、火が十分通っていないのかなと思われるかもしれません。しかしこれは京料理でよく使われる海老芋なので、これで火が十分通っているのです。

海老芋の特徴は煮物にしても煮崩れない、煮汁の色が付かなくてきれいに仕上がるといったことですが、別にそれを意識したわけではなく、たまたま今年作ったサトイモが海老芋だっただけなのです。

丁寧に面取りをして長時間じっくり煮込みました。巷では一応高級食材ですが、これが農家レストランならではです。
2011年12月22日

だしの話

スープの要は素材、だし、手間の3つだと思っています。素材はもちろん自家製の無農薬野菜、今回はだしの話です。

鶏ガラ.jpg手羽先.jpgテール.jpg

鶏ガラのほか、手羽先の先とテールの骨の3種類のだしをとっています。いずれも一度湯がき、鶏ガラは血合いや内臓を、手羽先はところどころに付いている羽根を、テールは熱湯にさらしただけではとれない羽根の付け根を、それぞれ丁寧に取り除いてから火にかけます。この作業だけで1時間以上かかります。

鍋.jpg

煮出すこと約4時間、これより短いと味が出なく、これより長いと雑味が出てしまいます。

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隠し味はこのパセリの茎とトウモロコシの芯。パセリは葉よりも茎に強烈な香りが、トウモロコシは実を取った後の芯にも強い甘みがあります。これらを一緒に煮出すことにより、風味を加えていきます。一応断っておきますが、トウモロコシは歯でかじった後ではありません。包丁でこそげ落とした後です。

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出来上がっただしを冷蔵庫で冷やすとこの通り、プルンプルンになります。手羽先とテールにコラーゲンが多く含まれているのです。

毎週こうして手間をかけてとっただしが、各種のスープのベースとなっているのです。塩をひとつまみ入れてチキンスープとしても十分いけます。
2011年11月6日

ミネストローネの主役

ミネストローネとはもともとごった煮という意味だそうで、入れる野菜は地方や家庭によって様々、特にこれといった決まったレシピはないようです。それでもトマトは欠かせないでしょう、いろいろな野菜のまとめ役としてたっぷり入れています。

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トマトの穫れる時期は短いので、シーズンになると朝から毎日トマトソース作りとなります。その数約200本、サンマルツァーノ種の赤がベースですが、毎回黄色や緑など違う品種のソースもブレンドしています。単一の品種を作っている生産者も、真っ赤なものだけより完熟する前のものも混ぜてソースにした方が複雑な味がしておいしいとしており、その応用です。

一般のレシピではトマトより水分の量の方が多いようですが、私たちは一度煮詰めたトマトをだしと同量入れています。濃厚なトマト味をお楽しみ下さい。
2011年10月5日

レモングラスのブーケガルニ

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畑に植えてあるレモングラスをこのように束ね、ブーケガルニのようにしています。

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用途はタイカレースープの隠し味。もともとトムヤムクンには欠かせないレモングラス、同じタイなので合うだろうと思った次第です。果たしていかに。
2011年9月18日

トマトおにぎりの隠し味

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ミニトマトがたくさん穫れるので、ドライトマトを作っています。

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オーブンでじっくり火を通すと、

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このようになります。

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トマトおにぎりはトマトで炊いていますが、このドライトマトも隠し味として入っています。というか思い切り具として見えているので、ちっとも隠れてなんかいませんが。
2011年9月11日

ガスパチョを冷やすボール

ガスパチョはキンキンに冷えていた方がおいしいとされています。しかしテイクアウトでは食べるまで少し時間があるので、暖かい日などは多少温度が上がってしまうかもしれません。

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そこで、ガスパチョの中にはこのような氷のボールが一つ入っています。水で薄まってしまうという心配はご無用、これは透明なトマトの液体、トマトウォーターと呼ばれるものの氷です。ですから食べてみるとかすかにトマトの味がします。

もともとこのガスパチョは野菜の水分だけでできており、水を加えていません。通常のものに比べるとかなり粘度が高いと思いますので、この氷が溶けたくらいが食べやすいかもしれません。

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併せて、ガスパチョの中にはこうしたミニトマトが入っています。ガスパチョ自体に酸味があるので、このミニトマトがより甘く感じられると思います。
2011年9月4日